【10年後の未来】「なくなる仕事」「生まれる仕事」 AI時代に子供が目指すべき職業は?
「AIに仕事を奪われる」 「子供が大人になる頃には、今の職業の半分がなくなっている」
ニュースやSNSでそんな言葉を目にして、不安を感じている保護者の方は多いのではないでしょうか。 大切なお子さんの将来を考えれば、心配になるのは当然です。
しかし、恐れる必要はありません。 歴史を振り返れば、産業革命で多くの手仕事が機械に置き換わりましたが、それによって新たな職業や産業が生まれ、私たちの生活は豊かになりました。AI革命も同じです。
仕事は「奪われる」のではなく、「形を変える」のです。
今回は、世界経済フォーラム(WEF)やゴールドマン・サックス、野村総合研究所などの信頼できるデータを紐解きながら、「10年後の未来、仕事はどう変わるのか?」「子供たちはどんな力を身につければよいのか?」について、IT講師の視点から分かりやすく解説します。
衝撃のデータ:世界の仕事はどう変わる?
まずは、世界や日本ですでに発表されている予測データを見てみましょう。数字で見ると、未来の輪郭がはっきりと見えてきます。
1. 8300万の仕事が消え、6900万の仕事が生まれる(世界経済フォーラム)
世界経済フォーラム(WEF)が発表した「Future of Jobs Report 2023」によると、今後5年間で世界の雇用の約23%に変化が起きると予測されています。 具体的には、8300万件の雇用が消失する一方で、6900万件の新たな雇用が創出されるとされています。
差し引き1400万件の純減となりますが、ここで重要なのは「仕事の総数が減る」ことへの恐怖ではなく、「仕事の中身が劇的に入れ替わる」という事実です。
2. 世界の3億人の仕事がAIの影響を受ける(ゴールドマン・サックス)
ゴールドマン・サックスの2023年のレポートでは、生成AIが現在の仕事の約4分の1を自動化し、世界で3億人のフルタイム労働者に影響を与える可能性があると試算されています。
しかし、同レポートは同時に、「多くの労働者はAIに仕事を『奪われる』のではなく、AIによって『補完』され、生産性が向上する」とも述べています。つまり、AIを使いこなすことで、より少ない時間でより多くの成果を出せるようになるということです。
3. 日本の職業の49%が代替可能?(野村総合研究所)
少し古いデータですが、インパクトの大きかった野村総合研究所(NRI)とオックスフォード大学の共同研究(2015年発表)では、「日本の労働人口の約49%が就いている職業において、人工知能やロボット等で代替可能になる」と推計されました。
ただ、NRIは最近のレポートでも「代替可能=仕事がなくなる」ではないと強調しています。技術的に可能であっても、コスト面や社会的な受容性、そして「人の温かみ」を求めるニーズなどから、すぐに全ての仕事がAIに置き換わるわけではありません。
具体的に「なくなる仕事」と「残る仕事」
では、具体的にどんな仕事がリスクに晒され、どんな仕事が輝くのでしょうか。
リスクが高い仕事(AIが得意な領域)
AIは「大量のデータの処理」「ルールの決まった作業」「正解のある問題」が圧倒的に得意です。そのため、以下のような業務はAIへの置き換えが進むでしょう。
- 定型的な事務処理: データ入力、経理の集計、給与計算など。これらはRPA(ロボットによる業務自動化)やAIが最も得意とする分野です。
- マニュアル通りの接客・対応: コールセンターの一次対応や、決まりきった案内業務。AIチャットボットやアバターの方が、24時間疲れずに正確に対応できます。
- 単純な翻訳・ライティング: 「情報をまとめるだけ」の記事作成や、日常的なビジネスメールの翻訳は、すでにChatGPTやDeepLが人間以上のスピードでこなしています。
- 特定のパターンの分析: 過去の判例を調べる(パラリーガルの一部業務)や、画像診断による病気の発見(医師のサポート業務)など。
価値が上がる仕事(人間が得意な領域)
一方で、AIには苦手なことがあります。それは「感情を理解すること」「全く新しいものを生み出すこと」「責任を取ること」です。
1. AIを「指揮する」仕事(カジ取り役)
AIは優秀なエンジンですが、ハンドルを握って行き先を決めるのは人間です。
- AIスペシャリスト/プロンプトエンジニア: AIにどのような指示(プロンプト)を出せば最高の結果が得られるかを理解し、AIを操る専門家。
- プロジェクトマネージャー: AIと人間チームを組み合わせ、プロジェクト全体をゴールに導くリーダー。
2. 心を動かす仕事(感情労働・対人サービス)
「効率」だけでは割り切れない、人の心に寄り添う仕事は、AIには代替できません。
- 教育者・保育士: 知識を教えるだけでなく、子供のやる気を引き出したり、心の成長を見守る役割。
- カウンセラー・セラピスト: 複雑な人間の感情を受け止め、共感する仕事。
- エンターテイナー・芸術家: 人の心を揺さぶる表現、ストーリーテリング。AIも絵や音楽を作れますが、「その人が作ったから感動する」という文脈は人間にしか作れません。
3. 0から1を生み出す仕事(イノベーション)
過去のデータがない全く新しいサービスや価値観を創り出すのは、人間の想像力(妄想力)です。
- 起業家・事業開発者: 「こんな世界があったらいいな」というビジョンを描き、形にする人。
- 研究者: 未知の領域を探求し、新たな理論や技術を発見する人。
2030年代に求められる「6つの知力」
野村総合研究所は、AIが社会に深く浸透する「AI拡張社会」において、人間に求められる「6つの知力」を提唱しています。これが、お子さんの教育の指針として非常に参考になります。
- 予測力: 変化の予兆を捉え、仮説を立てる力。
- 識別力: 真偽を見抜き、本質的な課題を発見する力。(フェイクニュースやAIのハルシネーションを見抜く力もこれです)
- 個別化力: 相手(人やAI)に合わせて、最適なコミュニケーションや提案をする力。
- 会話力: 意図を正しく伝え、相手の意図を汲み取る力。AIへの指示出しにも不可欠です。
- 構造化力: 複雑な物事を整理し、仕組み化する力。プログラミング的思考そのものです。
- 創造力: 異質なものを組み合わせ、新しい価値を生む力。
これらは全て、「暗記」や「計算」などのAIが得意な領域とは対極にある能力ばかりです。
日本だからこその「希望」:AIは救世主になる
ここまでは世界の話でしたが、視点を「日本」に向けてみましょう。実は、日本においてAIは「脅威」よりも「希望」の側面が非常に強いのです。
人口減少社会の「最強の切り札」
日本は世界で最も少子高齢化が進んでおり、労働人口が劇的に減少しています。 働ける人が減っていく中で、今の生活水準を維持するためにはどうすればいいでしょうか?
答えは一つ。「一人当たりの生産性を爆発的に上げる」ことです。そのための魔法の杖がAIです。
2030年、79万人のIT人材不足
経済産業省の予測によると、2030年には日本国内で最大79万人のIT人材が不足するとされています(IT人材受給に関する調査)。 これは裏を返せば、「AIやITを使える人材への需要は、日本では今後も上がり続ける」ということです。
海外では「AIによる失業」が深刻な問題になるかもしれませんが、慢性的な人手不足の日本においては、AIは人間から職を奪うライバルではなく、「人手が足りない現場を助けてくれる救世主」になるのです。
今の子供たちが社会に出る頃、AIを使いこなせるスキルは、日本社会を救うヒーローの資質になっているはずです。
親として、子供に何を伝えるべきか?
これまでの親世代(私たちも含め)にとっての「正解」は、「偏差値の高い大学に行き、安定した大企業や公務員になること」でした。 しかし、これからの時代、その「安定」の定義が崩れる可能性があります。かつての「安定した事務職」が、AI代替の筆頭候補になっているからです。
では、私たちは子供たちに何を伝えればよいのでしょうか?
「好き」と「情熱」こそが最強の防波堤
AIがどれだけ賢くなっても、人間のような「内側から湧き上がる情熱」や「好奇心」を持つことはありません。 「虫が大好きで一日中見ていられる」「絵を描くのが楽しくて仕方がない」「困っている人を放っておけない」 そんな子供ならではの「偏愛」や「情熱」こそが、AIには到達できない独自の価値を生み出す源泉になります。
「AIリテラシー」×「人間力」
プログラミングやAIツールの使い方(リテラシー)を学ぶことはもちろん大切です。それは現代の読み書きそろばんだからです。 しかし、それ以上に「人としての土台(人間力)」を育むことが重要です。 友達と喧嘩して仲直りする経験、自然の中で感動する体験、試行錯誤して何かを作り上げる喜び。これら全てが、AI時代を生き抜くための「抽象化能力」や「共感力」を育てます。
まとめ:未来は「選ぶ」ものではなく「創る」もの
10年後の未来予測は、あくまで予測です。 確かなことは、「未来は今の子供たちが創っていく」ということです。
「AIに仕事を奪われる」と怯えるのではなく、「AIという最強のパートナーを手に入れた!」とワクワクできるかどうか。 その鍵を握っているのは、私たち大人の声かけひとつかもしれません。
お子さんにこう聞いてみてください。 「AIロボットが何でも手伝ってくれるなら、君はどんな凄いことをやってみたい?」
その答えの中に、きっと未来の職業のヒントが隠されています。
